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心臓・血管を中心とした循環器系領域における再生医療を確立するために

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骨髄細胞による心筋再生療法

1.心筋再生医療の大きな可能性

心筋梗塞や動脈硬化症など虚血性心疾患・末梢血管疾患は,高齢化や生活習慣の欧米化などにより増加傾向にあります。薬物療法の効果がない重症心不全の生命予後は不良であり,根治的な治療法は現在のところ心臓移植以外にはありませんでした。しかし,最近の基礎研究の進歩により,新しい心血管系再生医療の可能性が開けてきました(図1)。主な研究成果のトピックスは以下に挙げられます。

  1. 骨髄細胞中の血管内皮前駆細胞(EPC)の発見
  2. 骨髄細胞投与による心機能・血流改善と臨床治験
  3. 血管新生を促進する液性因子(サイトカイン)の同定と臨床治験
  4. 心臓内に存在する心筋幹細胞の仮説提唱
  5. 間葉系幹細胞(MSC)による血管・心筋再生促進
  6. 心筋に分化誘導した胎児胚(ES)細胞による心筋再生

上の図表を含めたレポートをダウンロード

2.相次ぐブレークスルー

本稿では骨髄細胞による心筋再生療法について解説します。
生体内の臓器には幹細胞という幼若な細胞が存在し,必要に応じて増殖・分化することにより壊れた細胞や組織を補填しています。骨髄にも造血幹細胞(HSC)が存在し自己複製と分化・増殖によりHSCを維持しながら赤血球・白血球・血小板などすべての種類の血液細胞を産生しています。一方,胎児においては血液細胞と血管細胞とは共通の前駆細胞(ヘマンギオブラスト)から発生し,造血と血管形成の密接な関係が知られていました。

(1)EPCの発見

1997年に浅原らは骨髄細胞を培養するとその中の一部が血管内皮細胞に分化することを発見しEPCと命名しました。それまで成体の血管再生は,既存の血管から分枝が派生・伸張することによる機序(血管新生angiogenesis)のみと考えられていましたが,胎児期のように血管前駆細胞(EPC)が新たな血管を発生させる機序(脈管形成vasculogenesis)が生じている可能性が示されました。それ以後,EPCを循環血や骨髄から取り出して虚血部位に移植し,EPCによる血管再生を図る様々な研究が世界中で取り組まれてきました。

(2)骨髄幹細胞のポテンシャル

基礎研究では,2001年4月にOrlicらはマウスの急性心筋梗塞モデルに骨髄幹細胞(Lin- c-kit+ 細胞)を移植して,これらの細胞が心筋細胞や血管内皮細胞,血管平滑筋細胞に分化し心臓を再生していることを報告しました。

(3)進む臨床治験

また,臨床治験では,同年8月にドイツのデュッセルドルフ大シュトラウアー教授(心臓外科)を中心とするチームが心筋梗塞の患者に自己骨髄から採った幹細胞を注射し,心機能を改善させることに成功したと発表したのが最初です。それ以降,多くの研究グループが急性および慢性心筋梗塞患者に対して骨髄細胞投与の治験を行ってきました(表1)。50例を超えるコントロール・スタディも行われ(ハノーバー大のBOOST治験,フランクフルト大のTOPCARE-AMI治験など),統計的に有意な左心室収縮機能の改善が認められています。

上の図表を含めたレポートをダウンロード

3.残された課題

上記の研究はさらに多くの研究課題を提示し,骨髄細胞による心筋再生療法の実用化・普及のためにさらなる研究の進歩を求めています。現在の未解明な課題を以下に挙げます。

  1. 移植骨髄細胞の作用機序(移植部位における骨髄EPCの血管内皮細胞への分化・生着はわずかであり,心機能改善を説明できない。)
  2. それでは,骨髄中に存在するどの細胞種が主要な治療効果(心血管再生促進)を生じているのか(EPC,MSC,骨髄単核球,CD34+/-細胞など研究者により投与細胞の種類が異なるが最適の細胞種は何か)。
  3. 骨髄細胞が分泌するサイトカイン効果であるなら主要サイトカイン(群)は何か(骨髄細胞投与をサイトカイン薬剤により代用することが可能か)。
  4. 骨髄細胞投与により炎症惹起や再狭窄などの副作用の可能性も指摘されているが,どの細胞種による作用か

これらの問題について次回以降に解説してゆきたいと思います。

【参考リンク】
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