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心臓・血管を中心とした循環器系領域における再生医療を確立するために

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循環器系領域における再生医療を確立するために

再生医療・ティッシュエンジニアリングって?

子供のとき学校の理科の授業でイモリやプラナリアの一部を切断して、もとの場所におなじ器官ができるのを見て驚きませんでしたか?ヒトでも同じように傷つき機能を失った臓器や器官が再生して元にもどったら---。しかしながらヒトではこのように簡単にはいきません。それは胎児のときにはある再生能力は成長とともに失われていくからです。そこでヒトでも外傷や病気で失った臓器や器官を再びもとに戻すことはできないだろうか?と始まったのが再生医療です。そのなかでも特別な環境と刺激を人工的に加えることによって失われた“再生する能力”をとりもどすことを研究するのがティッシュエンジニアリング(組織工学)です。

人工血管は人工臓器

今回のお話は“自己組織化できる人工血管をつくれるか?”です。そうです、体中に張り巡らされている血管の代わりになる人工物を作り、それを自分の組織に置き換えようということです。世の中には色々な人工臓器があります。例えば、人工骨、人工関節、人工内耳、人工レンズ等々様々な種類の人工物=人工臓器が使用されています。特に循環器領域での人工臓器の役割は血液を滞りなく体中に行き渡らせることです。

私たちの体の中では、血液を循環させるポンプの役割が心臓、循環装置の制御バルブの役割が弁、循環させるパイプの役割が血管という具合に体中に血液をめぐらせ、循環システムが機能的に働いています。このシステムが故障したらどうしたら良いのでしょう?機械なら修理修繕ですよね。ヒトの場合、修復できるところは形成術等で直しますが、どうしようもないところは人工心臓、人工弁、人工血管に置換する手術が行われます。とりわけ人工血管は体内で比較的長時間埋め込まれ、その人工血管自身が動いて働くわけでなく構造的な性能(パイプの役目として)を活かして機能する人工臓器です。

上の図表を含めたレポートをダウンロード

人工血管って布?

人工血管は最初に臨床の現場で使用されて以来50年以上が経過しています。当初は硬質の管状の素材を用いていたようですが、いずれも血栓ができたり、血管にフィットせずに失敗だったようです。1950年代に合成繊維の布製チューブを使用したころから飛躍的に研究、臨床が進み、現在の素材はポリエステル繊維、多孔質四フッ化エチレン樹脂(ePTFE)が主流となっています(図1)。

ポリエステル繊維は手術のとき取り扱いが簡単で生体の血管とのフィッティングも良好です。しかし、繊維であるポリエステルは小口径(10mm以上が大口径、6〜8mmが中口径、4mm以下を小口径と呼ぶことが多い)の血管では血栓が形成しやすい欠点があります。ポリエステル繊維をニット状に編むと柔軟な血管になり、平織りにすると強度のある血管になります(図2)。

多孔質四フッ化エチレン樹脂(ePTFE)は物質がこびりつきにくい性質があるため、細い血管でも血栓による閉塞がおこりにくい点が優れていますが、疎水性で組織治癒があまり良くないことや素材に復元力や柔軟性に乏しいために、手術時の縫合に伴い針穴が塞がりにくく血液がもれたり、曲げることにより形状がつぶれるのが欠点でした。

人工血管ではありませんが心血管修復用パッチとしてはグルタールアルデヒド処理した異種心膜(注1)があります。グルタールアルデヒド処理した心膜は動物由来の製品だけに手術の取り扱いは容易で、血管ともフィッティングも良好です。しかしグルタールアルデヒド処理した心膜は手術後数年たつと、石灰化や耐久性等の問題の生じることが指摘されています。
図3はファロー四徴症術後の右室流出路狭窄の1例です。パッチの部分に使用されたグルタールアルデヒド処理した心膜は右室流出路で著明な狭窄を生じ、摘出したグルタールアルデヒド処理した心膜は高度の石灰化を認めます。このような症例では再手術で人工物を取り出し、別のものに取り替える必要があります。
(注1:グルタールアルデヒド処理をした心膜パッチ;心中隔欠損又は心筋組織損傷の閉鎖及び修復に用いる植込み型の修復素材をいう。ウマ心のう膜をグルタールアルデヒドで固定、処理している。)

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ティッシュエンジニアリングを信じて
-生分解性ポリマーによる自己組織化技術-

私たちは保有する再生医療技術を基に、インプラント用デバイスに応用できるバイオマテリアルの研究開発を行っています。私たちが開発しているバイオマテリアルは、従来の医療用素材と同様、もしくはそれ以上に生体適合性が高いだけでなく生体内で自己組織化させることが可能です。これにより血栓性、石灰化、炎症反応等を抑制し、デバイスの機能性と耐久性を飛躍的に向上させることが可能となり、生体内で自己組織化させることに成功しました。
この技術を基に、大動脈血管壁などの生体組織を補強するパッチや人工血管などの人工臓器を作成することにより、生体内で完全に自己組織化する新しいインプラント用デバイスの開発が可能となると考えています。

ティッシュエンジニアリングは人工臓器に置換する医療、他人の臓器を移植する医療とは違い自分自身の細胞から再生復元した機能臓器を生体内で作ることを目標にしています。そして近い将来「昔は機械を入れていたんだよ---。」といわれる時代がくることを願っています。

【参考リンク】
【参考文献】
  • 人工臓器は、いま(日本人工臓器学会編)   はる書房
  • ティッシュ・エンジニアリング(上田 実編)   名古屋大学出版会
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