ProductEXCOR® Pediatric小児用体外設置式補助人工心臓システム
世界で唯一の小児用補助人工心臓システム※
EXCOR®Pediatricは世界で唯一、新生児や乳幼児にも使用できる小児用の補助人工心臓システムです。EXCOR®Pediatricは、カニューレを介して心臓と大動脈に接続された血液ポンプが、心臓から血液を脱血して大動脈へ送血することで心臓と体循環を補助します。小児の患者さんは、血液循環が改善されることにより成長が促され、体重が増加し体躯も大きくなります。体躯が大きくなると体が必要とする循環血液量も多くなります。EXCOR®Pediatricは小児患者さんの成長に応じた血液循環量に対応するため、6つのサイズ(10、15、25、30、50、60mL)の血液ポンプを準備しています。日本では小児の場合、ドナー不足により心臓移植までは現状1年以上のサポートが必要です。豊富な血液ポンプサイズを揃えることにより、サポート期間中に体躯が大きくなっても、安全に充分な循環サポートを継続することが可能となります。
EXCOR®Pediatricのサポートにより、患者さんは心臓移植待機期間中を安全に過ごせるだけでなく、多くはありませんが、自己心機能の改善によって本機器から離脱された患者さんもおられます。
※2024年12月現在(以下同様)
補助人工心臓について
補助人工心臓には血液を送り出すポンプが体外に置かれる「体外設置式」と、体内に植え込まれる「植込み型」の二種類があります。成人では両方のタイプを使用することができますが、体躯の小さな小児にはいまだ実用できる植込み型は存在せず、体外設置式が唯一の選択肢となります。その中でも、小児に使用できる補助人工心臓は一つしかありません。それが「EXCOR®Pediatric 小児用体外設置式補助人工心臓システム」です。
補助人工心臓の目的
心臓は全身に血液を送るため休むことなく血液を拍出しています。様々な要因や疾患によって心臓の動きが悪くなり全身の臓器が必要とする血液を十分に送り出せなくなった状態を心不全といいます。
心不全には、まず心臓の負荷を軽減したり拍出を強くしたりする薬剤を用いた薬物治療が用いられますが、重症化すると薬物治療などの内科的治療だけでは対処できなくなり、最終的には心臓移植が唯一の治療法となります。しかしながら、心臓移植待機中に薬物治療だけでは全身の血液循環を維持できない場合は心臓を補助する人工臓器である「補助人工心臓」を植え込む外科的治療を用いることで、心臓移植に達するまで、又は心臓の機能が回復するまでの間、血液循環を改善し、救命および体調を回復することができます。
EXCOR® Pediatricと安全
EXCOR®Pediatric は小児患者さんの心臓を補助し救命するための医療機器です。安全に長期間サポートできるよう各種の安全対策を施しています。
血液ポンプの安全対策
本機器は血液ポンプ内のメンブレンと呼ばれる膜を空気の圧力で動かすことで血液循環を補助します。このメンブレンは薄い3枚の膜で構成されています。万が一メンブレンの1枚に異常が起きた場合でも、残りの2枚が血液ポンプ内の血液チャンバーと空気チャンバーを完全に隔離して安全性を維持するので、患者さんに悪影響を及ぼすことはありません。
駆動装置の安全対策
血液ポンプを駆動させる空気圧はIkus駆動装置 or Active駆動装置(以下、EXCOR駆動装置)という機器で作り出します。
Ikus駆動装置には空気圧を作りだすコンプレッサーと空気圧を調整するコンピューターのいずれにもバックアップシステムを持たせた安全設計が施されており、1系統に異常が発生した場合でもIkus駆動装置は停止することなくサポートを維持することが可能です。
Active駆動装置では空気圧システムを2つ搭載しており、単心室モードで動作中に空気圧システムに不具合が発生した場合に2つ目の空気圧システムがバックアップとして機能します。また両心室モードで動作中に一方の空気圧システムに不具合が生じた場合には1つで両方の血液ポンプに圧を供給します。
Active駆動装置ではまた、流量センサーにより血液ポンプからの平均血液流量をモニタリングすることが可能となっています。
異常が発生した場合はアラーム音とLEDで医療従事者の注意を喚起し、モニターに表示されるメッセージで状況を伝えます。医療従事者はアラームメッセージを確認することで適切な対応をとることができます。
EXCOR駆動装置は機能と安全性を維持するため、定期的な保守点検を行います。専用の保守設備が整ったカルディオのラボに搬入し、空気圧の状態、コンプレッサーの状態、圧力調整弁の動きなど、駆動装置の多種多様な機能と各種構成品を点検整備し、完全な状態で使用いただけるよう調整します。
万が一に備えた安全対策
万一Ikus駆動装置 or Active駆動装置(以下、EXCOR駆動装置)が停止した場合でも、非常用として、血液ポンプを駆動させるための手動ポンプが附属しています。EXCOR駆動装置の信頼性と高い保守点検技術により、日本では手動ポンプを使用する事態に陥った例はありません。しかしながら患者さんに傷害を与える僅かな危険性も排除するため、手動ポンプも毎年定期的に保守点検が施されます。
さらに、病院には常にバックアップ用のEXCOR駆動装置が準備されており、万が一の際にはすぐに入れ替えることができるよう「使用上の注意」に従い運用されています。
EXCOR® Pediatricの装着後
EXCOR®Pediatricを植え込んだ患者さんは、心機能が回復するか心移植に到達するまで入院することになります。
EXCOR®Pediatricのサポートにより、患者さんの血液循環が改善し全身の栄養状態が良くなることで体調が回復・安定します。本システムの駆動装置はバッテリー駆動ができる(Ikus駆動装置で30分、Active駆動装置で4~10時間)ので、医療従事者の協力のもと、患者さんは散歩やリハビリをおこなうことが可能です。EXCOR®Pediatricによって、長期にわたる移植までの待機期間に体調を整え、心臓移植の成功率を高めることが期待されます。心臓移植はドナーによる命のリレーです。悲しくも脳死に至ったドナーの善意による貴重な臓器提供を無駄にすることなく、レシピエントがしっかりとたすきを受け取り、命を引き継ぐことは極めて重要です。EXCOR®Pediatricは心臓移植を安全に行うための重要な役割を担っており、「命をつなぐ 夢をつなぐ」をモットーにカルディオは少しでもそのお役に立つため尽力しています。
製品詳細
EXCOR®Pediatricは世界で唯一の小児用体外設置式補助人工心臓システムで、新生児や乳幼児にも使用可能です。EXCOR®Pediatricを構成する製品群は、それぞれの患者さんに最適な治療を提供できるよう設計されています。
世界で唯一の小児用体外設置式
補助人工心臓システム
1つの駆動装置で左心補助(LVAD)、
右心補助(RVAD)、
両心補助(BVAD)が可能
10, 15, 25, 30, 50, 60mLの
6種類の血液ポンプを備え、
小児の体駆に適したサポートが可能
血液の乱流を極力抑えるポンプ設計と
Carmeda® バイオアクティブ
ヘパリンコーティングによる高い抗血栓性
EXCOR駆動装置は、駆動部・コントロール部ともに複数の
冗長設計が施されシステムの安全性が向上
EXCOR® Pediatricの製品構成
EXCOR®Pediatricを構成する製品群は、患者さんに最適な治療を提供できるよう専用に設計されています。
EXCOR® Active補助人工心臓駆動装置(以下、「Active駆動装置」)
- Active駆動装置はEXCOR® 血液ポンプを駆動するために設計された専用の駆動装置です。
- 1つの駆動装置で単心補助、両心補助(BVAD)が可能です。
- Ikus駆動装置に比べ小型化し、バッテリーによる駆動保証時間が長時間(4時間~10時間:設定による)となったことで病院敷地内での移動がより自由になり、患者さんのQOL向上が期待できます。
- 異常が発生した場合、アラーム音とLEDのシグナルとエラーメッセージ表示が、優先度の高いものがわかるように発出します。
- マニュアルポンプ(手動のポンプ)を各機体に装備しており、不測の事態により駆動装置が停止してもマニュアルポンプを用いて血液ポンプを拍動させることができます。
EXCOR® Ikus 補助人工心臓駆動装置(以下、「Ikus駆動装置」)
- Ikus駆動装置はEXCOR®の血液ポンプを駆動するために設計された専用の駆動装置です。
- 1つの駆動装置で左心補助(LVAD)、右心補助(RVAD)、両心補助(BVAD)が可能です。
- 収縮期圧、拡張期圧、拍動数、%シストールのパラメーターを幅広い範囲で設定可能です。
- 両心補助(BVAD)での駆動モードとして左右同期モード、 左右非同期モードそして独立したパラメーターを設定できる左右セパレートモードを備えています。
- コンソールとなるラップトップPCを備えており、空気圧や拍動数等のパラメーター設定、動作状況のモニターそしてアラーム発生時のメッセージの確認が可能です。
- 駆動部、コントロール部ともに複数の冗長性を持たせた設計により、システムと患者さんの安全性を高めています。
- 院内での移動を可能とするためバッテリーを装備しています。バッテリーによる駆動保証時間は30分です。
- 異常が発生した場合、アラーム音とLEDのシグナル、そしてコンソールへエラーメッセージを表示します。
- マニュアルポンプ(手動のポンプ)を各機体に装備しており、不測の事態により駆動装置が停止してもマニュアルポンプを用いて血液ポンプを拍動させることができます。
血液ポンプ
- 10, 15, 25, 30, 50, 60mLのポンプサイズを備えており、患者さんの体躯に適した血液循環サポートが可能です。
- ハウジングは透明なポリウレタン製で、ポンプ内部の観察が容易です。
- 血液を拍出するメンブレンは3枚の膜で構成されており、1枚の膜に損傷が生じても他の膜が機能することで安全性を高めています。メンブレンの間にはグラファイトパウダーが潤滑剤として塗布されており、摩擦を低減しています。
- 流体学的に優れたポンプおよびポリウレタン弁の設計により、世界最小の10mL血液ポンプが実用化されました。
- 血液の乱流を極力抑えるポンプ内部設計とCarmeda® バイオアクティブ ヘパリンコーティングにより高い抗血栓性を示します。
- エア抜きポートを備えていますので、装着時のエア抜きが容易です。
- 血液の逆流を防止する一方弁はポリウレタンによる一体成型です。信頼性の高さと稼働音の静かさの点で優れています。
- 血液ポンプは交換可能であり、患者さんに装着後1年間使用可能です。(注:血栓などが生じた場合にはその時点にて交換が必要となります。)
EXCOR® Pediatric カニューレ(以下、「カニューレ」)
- EXCOR®のカニューレはシリコン製でしなやかで、かつ耐久性に優れています。患者さんに合わせて選択いただけるようバリエーションをそろえています。
- 心尖部脱血用カニューレ:左心補助にて、左室心尖部に吻合して血液をポンプに送ります。
- 心房脱血用カニューレ:右心補助にて、右心房に吻合して血液をポンプに送ります。
- 動脈送血用カニューレ:左心補助にて、上行大動脈に吻合してポンプから血液を送ります。右心補助にて、肺動脈に吻合してポンプから血液を送ります。
- 動脈送血用カニューレ グラフトアダプター:用途は動脈送血用カニューレと同じですが、カニューレに人工血管を用いて動脈へ吻合します。
- 高い生体適合性を備えており、植え込み後の使用期限に制限はありません。
- それぞれのカニューレに対し直径6mm、9/12mm、12mmの口径を準備しており、体躯の小さな患者さんにも使用できる設計となっています。(注:一部製品は受注発注品です。詳しくはお問い合わせください。)
- 刺入部にはポリエステル製のベロアが創部に接触するよう設計されており、生着性を高めています。
- 心尖部脱血用カニューレ(全サイズ)の先端はチタン製、心房脱血用カニューレ(6mm)と動脈送血用カニューレ(6mm)の先端部はチタンリングにて補強され、内腔を確保します。
ドライビングチューブ(赤)&(青)
ドライビングチューブは血液ポンプとIkus駆動装置をつなぎ、駆動装置で作られた空気圧を血液ポンプに供給します。ドライビングチューブは「赤」と「青」の2種類のリングカラーがあり、これにより駆動装置コネクタへの接続ミスを防ぎます。
- ドライビングチューブ(赤):単室補助(LVAD or RVAD)、両室補助での左室補助(LVAD)に使用します。
- ドライビングチューブ(青):両室補助での右室補助(RVAD)に使用します。
アクセサリーセット
次の製品に関しては各製品添付文書をご参照ください。
- アクセサリーセット(PU-バルブ)
- カニューレエクステンションセット
- カニューレコネクティングセット
導入施設(2024年12月現在)
2015年8月1日 保険適応が開始されました。
導入施設 全国12施設に導入されています。
東京大学医学部附属病院
国立循環器病研究センター病院
大阪大学医学部附属病院
埼玉医科大学国際医療センター
国立成育医療研究センター
静岡県立こども病院
東京女子医科大学病院
九州大学病院
愛媛大学附属病院
筑波大学附属病院
北里大学附属病院
あいち小児保健医療総合センター
(順不同)
製品資料
動画
EXCOR® 血液ポンプの動画
Berlin Heart社提供
本動画中には成人用製品の説明が一部含まれておりますが、日本で承認を得ているのは小児用のみです。
詳細は注意事項等情報をご確認ください。
製品概要
販売名 | EXCOR Pediatric 小児用体外設置式補助人工心臓システム |
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承認番号 | 22700BZX00179000 |
一般的名称 | 単回使用体外設置式補助人工心臓ポンプ |
クラス分類等 |
クラスIV、高度管理医療機器 特定保守管理医療機器(駆動装置) 生物由来医療機器(血液ポンプ) |
製造販売元 | 株式会社カルディオ |
製造元 | Berlin Heart GmbH |
QM30314 Ver.6(2024年12月改訂)